前回、ぬか床の正しい匂いについてと、母のぬか床の扱い方の熱量の高さを書きました。
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その後、ブログ仲間の方から、ぬか床のかき混ぜ方について「その知恵、直接色々聞いてみたいですねぇ。」とコメントいただきとても嬉しかったです。ありがとうございます。
母はもう他界しているので、残念ながら直接は聞けないのですが、その当時、母から叱られたことを思い出しましたので書いてみますね!
ぬか床のかき混ぜ方
母はぬか床を宝物のように大事に扱っていました。その為、私のかき混ぜ方が悪くて、強く言われたことがあったのです。
その日は、珍しく母が熱を出してしまって、一日中、布団で横になっている状態でした。毎日ぬか床をかき混ぜている母にとって寝込んでいても、ぬか床が気になっていたのでしょう。私にかき混ぜて欲しいと頼んできました。
私は普段したことがなかったのですが、見よう見まねでぬか床の中に手を入れました。意外にもぬか床は冷たくヒヤッとしていました。
木の樽の中に入っているぬか床は、当時、学生だった私にとって、深くて中の見えないところに腕を入れるのが少し怖い物だったのです。そこで、私はちょっとだけ簡単にかき混ぜて終わりにしようとしました。
ところが、布団で寝ている母から声が飛んできました。
「しっかり底まで腕を入れて、優しく天地を返すように混ぜるんだよ」
しかたなく私は、肝を据えて腕を入れかき混ぜ始めました。
また母の声が聞こえてきました。
「べちゃべちゃと押さえ過ぎはダメだよ。遊んじゃダメだよ」
底の方まで、手を入れ混ぜた後、上からべちゃべちゃと泥で遊ぶように押さえつけていた音が聞こえたのでしょう。
また母の声が聞こえてきました。
「混ぜ終わったら、樽のふちに付いているぬかを綺麗に取るんだよ」
そのことはよく知っていました。毎日かき混ぜている母の姿を見ていたので、ぬかが樽のふちについたままだと虫がわいたり、雑菌が繁殖しやすくカビが生えやすいのです。だから樽の中は常に綺麗に仕上げ、そして蓋をする。これが一連の流れでした。
母が私にかき混ぜるのを頼んだのは、後にも先にもこの一回だけでした。私にはやっぱり任せられないってわかったんでしょうね。
ぬか床は生き物、手塩にかけること
突然ですが、手塩にかけるという言葉を聞いたことがあると思いますが、まさに「手塩にかける」という言葉がぴったりな母のぬか床への愛でした。自らの手で、触ってぬか床の状態によって上手く面倒を見ていたのです。
手塩にかけるの語源・由来
語源由来辞典より
「手塩」の語は室町時代から見られ、元は膳の不浄を払うために小皿に盛って添えた塩のことであった。
のちに、食膳に添えられた少量の塩を「手塩」と呼ぶようになった。
食膳の手塩は、味加減を自分で調えるように置かれたものなので、人任せにせず、自らの手をかけて面倒を見ることを「手塩にかける」と言うようになった。
世話をする意味で「手塩にかける」が使われるようになったのは、江戸時代からである。
季節が違えば漬かり方も違う、それを熟知して、いつでも美味しい茄子やきゅうりを食卓に出してくれました。
きゅうりや茄子は小ぶりなものを選んでいました。大きいと漬かりが悪いと言ってました。
カブや大根はあまり漬けなかったですね。たぶんですが、水分が出過ぎてしまい、ぬか床が安定しなくなるからではないかと推測しています。
ところでなぜ天地を返すのか?
なぜ天地返しをするのでしょうか?
ぬか床の表面には酵母菌がいます。かき混ぜないと表面に白い膜(酸膜酵母)ができ、刺激臭がしてきます。
酵母菌は空気がなければ繁殖を抑えることができる為、混ぜる際にぬか床の底の方へと移動させます。
一方、ぬか床の底には酪酸菌がいて、かき混ぜないと繁殖しすぎて異臭がするようになってきます。
酪酸菌は空気のある場所だと繁殖を抑えられる為、混ぜる時にぬか床の上のほうに移動させます。
その為、天地を返すのです。
母は難しいことはわからなかったでしょうが、ぬか床に対して、まるで子どもを育てるように愛情をこめて接していくうちに、自然に体得していったのではないかなと思います。
やはり母の愛は素晴らしいですね。
まとめ
項 目 | ぬか床の混ぜ方のコツ |
天地を返す | ぬか床の底まで空気を含ませるようにして、上のぬかを下の方へ、 下のぬかを上の方に移動させるように優しく混ぜる。 こねるのではなく、混ぜる。 |
ぬか床を整える | 混ぜた後、表面を優しく平らにならして空気を抜くようにする。 表面は強く押し付けすぎないように。 |
樽や容器のふち | 樽や容器のふちに付いているぬかは綺麗に拭ってから蓋をする。 |
私なりにわかったことは、
ぬか床の良し悪しを決めるのは、愛だと感じました!
最後まで見ていただきありがとうございます!!